京都を訪れる外国人はどこの国が多い?外国人宿泊客の国籍別データと集中・分散の実態【2024年確報版】

関西

世界屈指の観光都市・京都。街を歩けば多種多様な言語が飛び交い、かつての賑わいを取り戻したどころか、新たなフェーズに突入したことを肌で感じる今日このごろです。

しかし、実際に「どこの国の人が、どこに泊まり、どれくらいのお金を使っているのか」という詳細な実態をご存知でしょうか?京都府が発表した最新の「令和6年(2024年)京都府観光入込客等調査報告書」から、驚きのデータが見えてきました。

この記事では、単なる数字の羅列ではなく、その背後にある「なぜ?」という理由や、京都が直面している「集中と分散」という課題を、データを軸に紐解いていきます。


① この記事の3つの驚き

本題に入る前に、今回の調査で判明した「現代の京都観光」を象徴する3つのポイントをご紹介します。

  1. 外国人宿泊客の98.3%が京都市に集中――一方で「もうひとつの京都」への流入が急増中
    依然として京都市内への一極集中は続いていますが、丹後や南丹といった郊外エリアへの伸び率が注目に値する勢いとなっています。
  2. 米国人が外国人宿泊客の15.2%を占め、台湾・韓国を抑えて2位に
    アジア圏が上位を独占しがちな日本のインバウンドにおいて、京都は欧米からの支持が極めて高いのが特徴です。
  3. 2024年の外国人宿泊客835万人は2019年比で214%
    コロナ禍前の2019年と比較して、なんと2倍以上の宿泊客数に。過去最多を大幅に更新しました。

② 京都インバウンドの全体像と推移:量から質へのシフト

まずは、京都を訪れる外国人宿泊客がここ数年でどのように推移してきたのかを見てみましょう。なお、ここでの「外国人宿泊客数」は、京都府が市町村からの報告数値とアンケート調査の係数を用いて推計したもので、旅館・ホテル等への宿泊者のみをカウントしています。日帰り観光客は含まれません。

外国人宿泊客数の推移(参考・旧基準)

外国人宿泊客数状況の概況
2019年389.7万人コロナ前・過去最高水準
2020年46.2万人パンデミック発生
2021年5.8万人入国制限による底
2022年58.7万人水際対策の緩和開始
2023年545.8万人急激なV字回復
2024年835.4万人過去最多を大幅更新

2021年のわずか5.8万人という数字から、わずか3年で800万人を超えたという事実は、驚異的な回復力と言わざるを得ません。

さらに注目すべきは、お金の動きです。2024年の観光消費額(新基準)は2兆581億円に達しました。観光入込客数(延べ人数)が前年比112%であるのに対し、消費額は124%とそれを上回るペースで伸びています。これは、単価の高い外国人宿泊客が増えたことが消費額の伸びを牽引しており、観光のあり方が「量から質」へとシフトしていることが数字に明確に現れています。


③ 国籍別 外国人宿泊客ランキング:京都独自の「欧米人気」

次に、具体的にどこの国の人々が京都を選んでいるのか、京都市内のデータを中心に見ていきましょう。

国籍別 外国人宿泊客数(京都市・推計)

順位国籍宿泊客数(推計)シェア
1位中国1,834,425人22.3%
2位米国1,251,857人15.2%
3位台湾846,784人10.3%
4位韓国626,518人7.6%
5位英国389,382人4.7%
6位香港248,671人3.0%
7位仏国224,507人2.7%
8位豪州213,204人2.6%

【1位:中国】「爆買い」から「体験型観光」へのシフト

依然としてトップを走る中国。しかし、その中身は数年前とは様変わりしています。かつての「爆買い」に象徴される大量消費のスタイルから、現在はSNSを駆使して自ら情報を探す個人旅行者が主流です。

京都においては、有名寺社仏閣の拝観はもちろん、「精進料理」や「茶道」といった体験型観光への関心が非常に高まっており、文化的な知的好奇心を満たす旅へとシフトしている様子がうかがえます。

【2位:米国】京都ならではの「知的なブランド力」

特筆すべきは、米国が15%を超えるシェアで2位にランクインしている点です。日本全体で見ると、距離の近い韓国や台湾が上位を占めることが多いのですが、京都においては欧米諸国、特に米国の存在感が際立っています。

米国人旅行者の多くは、京都に「侘び・寂び・禅」といった精神的な文化体験を求めています。単なる物見遊山の観光ではなく、歴史的背景を深く理解しようとする姿勢が強く、京都という街に独自の価値を見出しています。

【欧州・豪州勢(英・仏・豪)】高い貢献度と滞在特性

5位の英国、7位の仏国、8位の豪州といった国々も存在感を示しています。欧州からの旅行者は、アジア圏の旅行者と比べて滞在期間が長い傾向にあり、1人あたりの観光消費額が高いのが特徴です。彼らは「有名スポットを足早に回る」よりも、「京都の空気感に浸る」ことを重視し、路地裏の飲食店や静かな庭園を好む傾向があります。


④ 98.3%の集中と「もうひとつの京都」への分散

好調な京都観光ですが、大きな課題も浮き彫りになっています。それは地域的な「偏り」です。

地域別 外国人宿泊客数(2024年)

地域外国人宿泊客数対前年比シェア(全体比)
京都市8,212,382人153%98.3%
丹後96,094人125%1.15%
南丹23,486人206%0.28%
中丹14,425人240%0.17%
山城7,870人115%0.09%
合計8,354,371人153%100%

構造的なオーバーツーリズムと「伸び率」への期待

データを見ると、宿泊客の98.3%が京都市内に集中していることがわかります。京都市内の混雑、いわゆるオーバーツーリズムが社会問題化する一方で、それ以外の地域はまだ1%前後のシェアに留まっています。

しかし、注目すべきは「伸び率」です。

特に中丹エリア(福知山・舞鶴など)は前年比240%南丹エリア(亀岡・南丹など)は前年比206%と、爆発的な勢いで増加しています。

丹後・宮津に見る「本物の日本」への関心

丹後エリア(96,094人)の内訳を見ると、日本三景の一つである天橋立を擁する宮津市が67,031人(前年比116%)と、エリア全体の約7割を占めています。

天橋立のような強力な観光資源と、伊根の舟屋に代表される「海と共に生きる暮らしの風景」がセットになることで、欧米を中心とした「本物の日本の原風景」を求める層を強く惹きつけています。また、南丹市の「美山かやぶきの里」や、亀岡市の「保津川下り」など、既存の観光地への外国人流入も着実に増加しており、混雑を避けた新しい京都の楽しみ方が広がりつつあります。


⑤ 考察:なぜ欧米人はこれほどまでに「京都」に惹かれるのか

米国15.2%、英国4.7%、仏国2.7%……。アジアの主要都市と比較しても、京都における欧米シェアの高さは異例です。その背景には、京都という街が持つ独自のブランドイメージがあります。

「未来」の東京、「歴史」の京都

欧米からの旅行者にとって、東京は「ネオン・高層ビル・最先端技術」といった「未来都市」の象徴です。それに対し、京都は「寺院・着物・伝統工芸」という「歴史都市(ヘリテージ)」の象徴として明確に分けられています。

「一生に一度は日本に行ってみたい」と考える欧米人が旅程を組む際、東京で現代の日本を体験し、京都で日本の魂(ソウル)に触れる。この二段構えのルートにおいて、京都は絶対に外せない場所となっているのです。

「映え」よりも「精神性」への共感

近年、欧米では「マインドフルネス」や「ウェルビーイング」といったキーワードが重視されています。

  • 坐禅体験で自分と向き合う
  • 写経で心を落ち着かせる
  • 精進料理で命の恵みをいただくこうした体験は、単なる観光地巡りを超えた「自己への投資」として捉えられています。京都の持つ「静寂」や「規律」といった精神性が、多忙な現代を生きる欧米人の価値観と深く共鳴していると言えるでしょう。

⑥ まとめ:2兆円の巨大市場と、変化の萌芽

2024年の京都府の外国人インバウンドは、宿泊客数835万人、消費額2兆円超という未曾有の規模に到達しました。量(人数)の拡大以上に質(消費単価)の向上が見られる点は、これからの観光立国としての大きな成果と言えます。

依然として京都市内への圧倒的な集中という課題は残るものの、南丹や中丹、丹後といったエリアで見られた急激な伸び率は、観光客の興味が徐々に「深く、広く」分散し始めている兆しでもあります。「有名なスポットを撮る旅」から「その土地の日常や文化に触れる旅」へ。京都の観光は、今まさに成熟期に向けた過渡期にあるのかもしれません。

次に京都を訪れるときは、少しだけ足を伸ばして「もうひとつの京都」を覗いてみてはいかがでしょうか。そこには、データだけでは語り尽くせない、新しい発見が待っているはずです。

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出典

令和6年(2024年)京都府観光入込客等調査報告書(京都府商工労働観光部)をもとに『となりの外国人』編集部が作成。

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